ドイツフローリストについて
この質問を何度されただろうか。
ドイツフローリストって何?
って聞かれて、「デザインが他とこうちがう」とか「色がこう違う」って答えをみんな期待しているようだけれど私が思うに、一番の違いは教育システムだと思う。
これはフローリストの世界だけに言えるのではなく、ドイツでは様々な職業に共通して言えることである。
ドイツではマイスター制度があり、厳しく一貫した教育システムが存在し、人材育成の一定のレベルを保たれています。
具体的には
ドイツ人は小学生の時に、大学に進むのか職人の道に進むのかを決めます。
大学に行くには、Gymnasiumという中高一貫校へ進みます。
Gymnasiumに行かないと大学に行く道が閉ざされ、職人の道を選ぶ子たちはFachschuleやRealschule等に進みます。
そしてフローリストの場合16歳くらいで、職業訓練校へ通います。
職業訓練校へ通う3年間A zub(職業訓練生)と呼ばれ、職業訓練校に通いながら花屋で働きます。
これは、Dual system(二重制度)と呼ばれ、学校の勉強と現場の経験、どちらも欠いても一人前のフローリストにはなれないという考え方です。
日本にはフラワーアレンジメントを始め様々な趣味の学校がありますがドイツにはそのような趣味の学校はほとんどなく、職業にするために学ぶ場となります。
日本でフラワースクールに何年通っても、現場で通用する人材は育たないことを考えるとドイツのこのシステムはとても合理的だと思います。
職業訓練校へ3年通い、試験に合格するとフローリストの資格がもらえます。
そして実務経験6年でマイスター学校入学の許可が出ます。
マイスター学校へ2年~3年通い、試験に合格するとマイスター取得になります。
学校では デザインだけではなく、植物の生態を知る植物学、建築史、造形学、色彩学、経済学等を学び、マイスター学校ではそれに加え、経営学、簿記、マーケティング、少年心理学等の科目も入っています。
そしてマイスターの試験の前に教員資格をとらないとマイスターの試験を受けることは出来ません。
マイスターは直訳すると親方です。
使命は次世代の若いフローリストの育成でもあります。
そういう意味で、16歳の見習いを雇うに当たって少年心理学は必要だし人を育てるという面から教員資格が必要です。
マイスターのいるお店だけがAzubを雇うことが出来、学校だけでなく、職場でも人を育てる一定のレベル以上の環境を保っております。
お店を独立するには、経営学、簿記、マーケティング等も必要です。
このようにバランスのとれた教育がドイツフローリストの強みだと思います。
ドイツのフラワーデザインの理論は世界で一番の完成度と言われています。
その理論を基礎から学ぶとどんなデザインでも創りだすことが出来ます。
人間は好みがあるので、スタイルが偏りがちになります。
お花屋さんでも、シャープなアレンジを得意とするお花屋さん。
ふわふわ可愛いアレンジを得意にするお花屋さん、様々ですがドイツフローリストの理論をしっかり学ぶとカッコいい系でもナチュラル風でもどんなデザインも可能。
これもドイツフローリストの特徴だと思います。
花屋は、フラワーアーティストではありません。
アーティストは自分の世界観を表現していけばいいのですが、花屋はお客様の要望に応えるのが仕事です。
だから花屋はお客様が欲するデザイン、全て出来なければならない。
重要なのは自分の好みではなく、お客様の好み。
ミュンヘンの花屋で働いていた時のオーナーが言っていた言葉です。